欧米の国々の基準に比べると、日本の家は寒いといわれています。 建築技術が進み、優秀な断熱材が使われているのに、なぜ寒い家なのでしょうか?築年数の古い家から仕方がない…そんなことはありません。築年数の古い家であっても、天井や壁、床下に断熱材が使われていない住宅はありません。最新の断熱性はなかったとしても、断熱性能は備えています。
ではなぜ寒いのでしょうか?その理由は窓にあります。
寒い住宅の原因は窓
「暖房をしているのに、部屋が暖まらない」
「暖房をしている部屋と、浴室や玄関の温度差が激しい」
このような状況になってしまう原因は、窓から暖房の熱が逃げていること、窓から隙間風とともに、冷気が入り込んでくるからです。
冬、窓から逃げていく熱の量は、家全体から逃げていく熱の量のうちの52%もあります。屋根からは5パーセント、換気扇からは15パーセント、外壁からは19パーセント、床からは9%の熱が、それぞれの場所から逃げていきます。全部合わせても、半分以下です。
もし、窓から熱が逃げださず、冷気を伴う隙間風が入ってこなくなれば、住宅の断熱性は一気に上がります。築年数の長い家であっても、寒い家から暖かい家に変わります。
窓は、屋根や壁に比べると、面積が小さいので、住宅の断熱性にそれほどの影響を与えるとは考えにくいかもしれません。しかし、窓ガラスの薄さと、壁や屋根の厚さを比較してみれば、窓がたやすく熱を逃がしてしまうことがわかります。加えて、引き違い窓のサッシには隙間があり、そこから隙間風が入ってきてしまうのです。
また、窓自体が自えるので、コールドドラフトという現象も起こります。窓辺の冷えた空気が、壁を伝って床に拡がる現象です。空気には、暖かかくなると上昇する、冷えると下降するという性質があります。冷えた空気は、床に拡がって、足元をヒヤッとさせます。暖かい空気は、天井付近に溜まります。その結果、暖房をしているのに、足もとが冷える、顔ばかり熱くなるというような状態になってしまうのです。
それでも暖房をしている部屋は、まだ何とか過ごせますが、浴室やトイレ、玄関は、さらに厳しい寒さです。築年数の長い家では、廊下のある間取りが多いので、廊下も冷えます。寒い浴室、寒い廊下を通っていく寒いトイレは、快適とは言えません。そのような環境は、若い人にとっては、快適ではないだけで済む環境ですが、お年寄りにとっては、健康に悪影響を与える環境です。健康に良い家は、家の中に温度差が少ない環境が調えられた家です。暖房をしている部屋としていない場所の温度差が大きい家は、健康に良い家とは言えません。
また、断熱性の低さは、暖房をしている部屋の中にも、温度差を作ります。足元が冷え、顔ばかり熱くなるというだけではなく、暖房機の周辺は暖かく、窓のそばは寒いという状況にもなります。
■ 寒い窓は結露も作る
冬になると、窓に溜まる水滴に悩まされこともあります。この結露は、窓ガラスの外側と、内側の温度差が大きくなると、発生します。結露の害は、拭き取りが面倒なだけではありません。結露の水で湿度が上がり、カビを発生してしまうことがあります。カビが発生すると、カビの胞子が、室内の空気中に舞い散り、アレルギーの原因になってしまいます。また、カビが発生すると、カビを好むダニも発生し、さらにアレルギーの原因が増えてしまいます。また、結露の水分が壁に沁み込んでしまうと、壁にシミができてしまうこともあります。結露の量が大ければ、壁の奥までしみこみ、家の寿命を縮めることにもなりかねません。
暖かい住宅を作る断熱窓
熱を逃がさない窓は、断熱窓です。そして断熱窓には、機能の高さの違いによって、いくつかの種類があります。
■ 断熱窓の種類
樹脂窓 断熱窓の中で、最も高い機能を持つ窓です。複層ガラス、またはトリプルガラスと、樹脂サッシが組み合わされた窓です。
* 複層ガラス 2枚のガラスが組み合わされたガラスです。2枚のガラスの間の空気層が、熱の移動を妨げます。
* トリプルガラス 3枚のガラスが組み合わされたガラスです。現在ある断熱ガラスの中で、最も高機能なガラスです。
* 樹脂サッシ 樹脂で作られたサッシです。築年数の長い家で一般的に使われているアルミサッシには、熱の伝わりを防ぐ性質がありません。反対に、熱を伝えやすい性質です。その性質は、鍋やケトルに使われた場合には非常に役立ちますが、サッシに使われた場合は、窓の断熱には役立ちません。例えば、せっかく複層ガラスにしても、サッシがアルミであれば、サッシ部分の結露はなくなりません。
* アルミ樹脂複合窓 室内側には樹脂、室外側にはアルミの複合フレームと複層ガラスが組み合わされた窓です。樹脂窓よりは、断熱性能は落ちますが、アルミサッシに比べると、はるかに高い断熱性があります。樹脂は、まだまだ高価なサッシなので、断熱窓のほとんどは、このアルミ樹脂複合窓です。
暖熱窓へのリフォーム
断熱窓のリフォームには、大きく分けて3つの方法があります。窓交換と内窓設置、ガラス交換です。どのリフォームも、カバー工法で行います。
* カバー工法 以前は、窓の工事をするためには、壁に組み込まれている窓枠から工事をする必要があり、壁を壊して窓のリフォームが行われていました。現在でも、今ある窓より大きくしたい場合には、壁を壊さなくてはなりませんが、それ以外の場合には、カバー工法でリフォームができます。カバー工法とは、今ある窓枠を利用して、窓のリフォームをする方法です。壁を壊さないので、廃材が少ない、室内側から工事をするので、2階の窓であっても足場を組む必要がない、騒音や粉塵が少ない、短時間で工事が完了するなどの特徴があります。
■ 窓交換
今ある窓枠の上に、新しい窓枠をかぶせ、窓を交換する方法です。窓交換だけができることもあります。
- 窓の開閉方法を変える 窓の開閉方法には、引き違い窓の他に、上げ下げ窓、すべり出し窓など様々ありますが、窓交換のリフォームでは、今と異なる開閉方法も選べます。FIX窓に替えることもできます。
- 窓のサイズを小さくする パネルと組み合わせて、現在の窓より、小さな窓に変えられます。
■ 内窓設置
今ある窓の内側に、新しい窓を取り付けるリフォームです。窓交換より費用を抑えられます。加えて、二重窓には、他の窓にはないプラスα効果があります。
- 防音・遮音ができる 窓と窓の間の空気層が音の伝わりを防ぐため、室内が図書館と同じくらい静かになります。道路や線路、騒がしい商業施設が近くにある、というような環境にはおすすめです。
- 防犯性が上がる 外側の窓と内側の窓で、鍵が二重になるので、防犯性が上がります。
■ ガラス交換
今あるサッシのまま、ガラスだけを複層ガラスに交換するリフォームです。3つの方法の中で、最も費用が抑えられます。ただし、サッシからの隙間風、サッシ部分の隙間風は改善できません。